• SPORTS CROWD ロゴ
  • - アスリートの練習法や、日々のトレーニング、栄養・医療など専門家の知識を集めた、スポーツの新しい楽しみ方を提供する 【スポーツ横断型WEBメディア】 -

  • スポーツクラウド【スポーツ横断型WEBメディア】
  1. HOME
  2. トレーニング
  3. 陸上競技

ガトリン選手に学ぶ、爆発的加速を生み出す膝の使い方!

  • 投稿者:荒川優元100m選手:スプリントコーチ

<スポーツクラウド直営>走りのプライベート指導はコチラ

ガトリン選手に学ぶ、爆発的加速を生み出す膝の使い方!

今回は加速力につながる膝の使い方を見ていきます。
陸上関係者の方はもちろんのことダッシュ力を高めたいと考えている陸上以外の方にも参考にしてほしい知識です。

さて、昨年の北京世界陸上において、前評判でボルトをおさえてスプリント種目の金メダルに最も近いといわれていたのがジャスティン・ガトリン(33歳,アメリカ)です。
昨年は前半シーズンの大会で、
100m:9秒74
200m:19秒57
というとんでもない自己ベストを出し、一気に注目の的となりました。

彼はレース前にあるモーションをすることで有名ですが、あれは自分を檻の中の猛獣に例えて、きついトレーニングに耐えてきた自分を檻から解放するというような意味が込められているようです。

今回はガトリン選手のスタートからのダッシュを見ていきましょう。
スタートの練習風景が映った貴重な動画です。

≪実はストライド走法!?≫
ガトリン選手の走りを想像していただきたいのですが、その特徴として地面を擦るようにして走ることです。
実際、他選手と比べても足があまり上がりません。

では、足を上げない分速く回しているのかといえば、答えはNOです。
ある研究ではガトリン選手は平均ストライド2.40m、ピッチは4.26Hzと報告されています。
ピッチ=1秒間に足が接地する回数で表される歩数頻度(stride frequency)なので、1秒間に4.26回転していることになります。
日本のトップスプリンターが4.7前後であることを考えると、ガトリン選手のピッチは非常に小さく、典型的なストライド走法であるといえます。

足をあまり上げない、つまり重力による足をおろす力を使わずに大きなストライドを出せるのが、ガトリン選手最大の特徴だといえます。
なぜこんなことが可能なのでしょうか?

≪ポイントは膝の角度とその持続時間≫
ここからは私の主観も入ってくるのでご承知おきください。
一つのポイントは、膝を曲げた状態で強い力を発揮できることだと思います。
速い選手は、加速中の地面を押す際に膝を曲げた状態のまま地面から足が離れます。
逆に地面を押すときに膝が伸びきってしまう人は力のメリハリができていないことが多くケガにもつながってしまいます。

ガトリン選手は走っているときに腰の位置が全く変わりません。
これは膝の曲げ伸ばしがなく、上下運動が起こっていないことを意味します。

「体験してみよう」
みなさんその場で片足立ちになってみてください。
そして支持脚の膝を少し曲げましょう。
その状態から地面を押して前に進んでみてください。
このとき膝の角度は変えないでくださいね。
できたでしょうか?


このように膝の曲げ伸ばしを使わずに地面に力を加えるのは意外に難しいんです。
これによってガトリン選手は力のロスを防いでいると考えます。

もう一つは、その持続時間です。
私自身ある程度までなら膝の角度維持のままでスピードを高めることができますが、スピードが上がってくるとどうしてもこらえられなくなってきます。
スピードが上がるにつれて接地時間がどんどん短くなるので、体をコントロールできなくなってしまうんです。
このとき、臀部(お尻)はもちろんのこと、腹筋周辺にもものすごい負荷がかかります。
普通は加速中に耐えられず体が起きてしまいます。

一方でガトリン選手はスタートからの動きと前傾姿勢を維持したままでそのまま中間疾走につなげています。
このように膝の角度を維持したままで長い時間維持できること、またそれを可能にした高いスピードにも対応できる体の強さを持っていることがガトリン選手の強みなのではないかと思います。


膝の角度に関しては、練習しないとなかなか身につきません。
できるようになりたい方は、ウエイトトレーニングやタイヤ引き、坂ダッシュの時に、膝の角度を固定して伸ばさないように意識して行ってみてください。


この動画は「SPRINT NL」様の作品です。

***********************************************
筆者:
荒川優(あらかわゆう)
☆大学陸上コーチ(100m:10秒5)
筑波大学出身。大学コーチとして就任後、1年で全員の自己ベストを更新。
オリンピック選手や代表レベルの選手からも高い支持を受けている。
➣2010ニュージーランド・オタゴオープン 準優勝
***********************************************

  • 投稿者:荒川優元100m選手:スプリントコーチ

【新着】関連記事

この記事を見た人はこんな記事も見てます。

  • メディシンでスタート練習

    メディシンでスタート練習

    メディシンボールを使って下半身の力を上半身に伝え、身体全...

    2015年05月20日

  • 100m選手においてストライドを落とさずピッチを向上させた事例研究

    100m選手においてストライドを落とさずピッチを向上させた事例研究

    冬季練習の季節がやってきましたね。 この冬を機に、走フ...

    2017年07月10日

  • 【接地の技術でスピードを高めよう!】スプリントコーチがおススメする6種のスプリントドリル

    【接地の技術でスピードを高めよう!】スプリントコーチがおススメする6種のスプリントドリル

    スプリントドリルとは、スピードを高める準備を行うための動...

    2020年04月18日

  • スロートレーニングで低回数で高効果のトレーニング!中殿筋を鍛える!

    スロートレーニングで低回数で高効果のトレーニング!中殿筋を鍛える!

    今回はランナーの方は必見ですが、身体を鍛えたい方や健康維...

    2016年04月28日

  • ジョナサン・エドワーズに学ぶ!三段跳“水きりジャンプ”の極意③

    ジョナサン・エドワーズに学ぶ!三段跳“水きりジャンプ”の極意③

    前回は、脚さばきと踏み切り角度について技術的ポイントをお...

    2016年03月08日

  • ラダーでランニングフォーム作り

    ラダーでランニングフォーム作り

    ラダーを使ったランニングフォームの基礎を学んでいきましょ...

    2016年01月28日

  • 【キレのある動きを求めて】素早い動きの獲得に!「ステッピングトレーニング」

    【キレのある動きを求めて】素早い動きの獲得に!「ステッピングトレーニング」

    多くのスポーツでは試合も多くなり、キレのある動きが求めら...

    2018年05月22日

  • 競歩ドリル

    競歩ドリル

  • 女子100m世界歴代10傑

    女子100m世界歴代10傑

  • 【練習メニュー】下り坂でスピードトレーニング(4種)

    【練習メニュー】下り坂でスピードトレーニング(4種)

  • より動きに近いトレーニングを行おう!【ケンブリッジ飛鳥選手のフライングスプリット】

    より動きに近いトレーニングを行おう!【ケンブリッジ飛鳥選手のフライングスプリット】

  • 【名門コニカミノルタ式】骨盤歩きで腹筋・股関節の強化

    【名門コニカミノルタ式】骨盤歩きで腹筋・股関節の強化

  • 【早く走るための要素が詰まっている】速歩きでスプリントを磨こう!

    【早く走るための要素が詰まっている】速歩きでスプリントを磨こう!

  • フレキ一歩ドリル

    フレキ一歩ドリル

  • フルランジで下半身を強化!力強くしてみよう!

    フルランジで下半身を強化!力強くしてみよう!

  • 60m世界歴代1〜10位 映像

    60m世界歴代1〜10位 映像

  • ステファンホルム・Hジャンプ

    ステファンホルム・Hジャンプ

  • 瞬発力を鍛えよう!スクワット~ボックスジャンプ

    瞬発力を鍛えよう!スクワット~ボックスジャンプ

  • スティックマークで刻んでみよう!マーク走

    スティックマークで刻んでみよう!マーク走

  • 下り坂で重心移動をマスター

    下り坂で重心移動をマスター

  • 【走り幅跳び】正しい角度と動きを身につける練習方法

    【走り幅跳び】正しい角度と動きを身につける練習方法

  • 恐るべきパワー!パウエル選手のハイクリーン&フロントスクワット

    恐るべきパワー!パウエル選手のハイクリーン&フロントスクワット

  • ハードル振り下ろしドリル

    ハードル振り下ろしドリル

Category New/カテゴリー新着情報

トレーニング
  • 【たった3分で追い込める!】最強腹筋トレーニングメニュー
    【たった3分で追い込める!】最強腹筋トレーニングメニュー
    「全方向から鍛えられる計6種類の腹筋サーキット...詳細
  • 【1日3分】室内でできる全身トレーニング(中級編)
    【1日3分】室内でできる全身トレーニング(中級編)
    アスリートが考えた3分『全身トレーニング』 ...詳細
  • 【練習メニュー】下り坂でスピードトレーニング(4種)
    【練習メニュー】下り坂でスピードトレーニング(4種)
    自主練や部活で使えるシリーズ第三弾『下り坂』の...詳細
  • 【練習メニュー】上り坂でスピードトレーニング(6種)
    【練習メニュー】上り坂でスピードトレーニング(6種)
    自主練や部活で使えるシリーズ第二弾『上り坂』の...詳細
陸上競技
  • 【練習メニュー】下り坂でスピードトレーニング(4種)
    【練習メニュー】下り坂でスピードトレーニング(4種)
    自主練や部活で使えるシリーズ第三弾『下り坂』の...詳細
  • 【練習メニュー】上り坂でスピードトレーニング(6種)
    【練習メニュー】上り坂でスピードトレーニング(6種)
    自主練や部活で使えるシリーズ第二弾『上り坂』の...詳細
  • 【恐怖を超えた究極のスタート】コールマンから学ぶスタートの極意
    【恐怖を超えた究極のスタート】コールマンから学ぶスタートの極意
    クリスチャン・コールマン(Christian ...詳細
  • 【長距離ランナー必見!】ランナーにオススメのトレーニング集
    【長距離ランナー必見!】ランナーにオススメのトレーニング集
    オレゴンプロジェクト所属のゲーレン・ラップ選手...詳細
ケガ・ストレッチ
  • 下向肘上げ 改善エクササイズ【フィジカルチェック用】
    下向肘上げ 改善エクササイズ【フィジカルチェック用】
    「フィジカルチェック項目:下向肘上げ」の点数が...詳細
  • 下向胸上げ 改善エクササイズ②【ケガ予防フィジカルチェック用】
    下向胸上げ 改善エクササイズ②【ケガ予防フィジカルチェック用】
    「フィジカルチェック項目:下向胸上げ」の点数が...詳細
  • 下向胸上げ 改善エクササイズ①【フィジカルチェック用】
    下向胸上げ 改善エクササイズ①【フィジカルチェック用】
    「フィジカルチェック項目:下向胸上げ」の点数が...詳細
  • 【梅雨の季節の体調管理】アスリートに必要な知識
    【梅雨の季節の体調管理】アスリートに必要な知識
    蒸し暑く過ごしづらい季節がやってきました。そう...詳細
サッカー
  • エムバぺ(フランス代表)はなぜあんなに速いのか!?[陸上コーチによる解説]
    エムバぺ(フランス代表)はなぜあんなに速いのか!?[陸上コーチによる解説]
    先日4年に1度のワールドカップが行われ、日本代...詳細
  • 【W杯でも活躍!】サッカーイングランド代表が行なった〇〇を使ったトレーニング
    【W杯でも活躍!】サッカーイングランド代表が行なった〇〇を使ったトレーニング
    2018年ワールドカップ盛り上がりましたね! ...詳細
  • 【W杯でも大活躍】レアル・マドリードのトレーニング
    【W杯でも大活躍】レアル・マドリードのトレーニング
    欧州チャンピオンズリーグ3連覇、今回のW杯でも...詳細
  • 【世界トップの瞬発力!】メッシ選手のアジリティトレーニング【間も無くW杯開幕!】
    【世界トップの瞬発力!】メッシ選手のアジリティトレーニング【間も無くW杯開幕!】
    5度のバロンドール受賞、5回のチャンピオンズリ...詳細
栄養・食事
  • 【瞬発的エネルギー!】クレアチン摂取タイミングのポイントと注意点
    【瞬発的エネルギー!】クレアチン摂取タイミングのポイントと注意点
    クレアチンはアミノ酸の一種で、筋肉内のエネルギ...詳細
  • 【骨強化に】身長を伸ばす為に必要な栄養素【Jr世代は特に大切!】
    【骨強化に】身長を伸ばす為に必要な栄養素【Jr世代は特に大切!】
    色々な競技の上で、身長が高いということが有利に...詳細
  • 【金メダリストの朝ご飯にも!?】正月によく食べるお餅の栄養&効能
    【金メダリストの朝ご飯にも!?】正月によく食べるお餅の栄養&効能
    お正月はおせち料理やお雑煮など、お餅を食す機会...詳細
  • 【身体の調子を整える】サプリメントアプローチ「ZMA」
    【身体の調子を整える】サプリメントアプローチ「ZMA」
    普段の食事から摂取するのが難しい栄養素がある場...詳細
野球
  • 【肩甲骨に効果大!!】前田健太投手が行うマエケン体操をやってみよう!
    【肩甲骨に効果大!!】前田健太投手が行うマエケン体操をやってみよう!
    ドジャースの前田健太投手が行っている「マエケン...詳細
  • 【肩甲骨が動かないと肩に負担!】野球の調査で分かった肩甲骨とその周辺筋の重要性
    【肩甲骨が動かないと肩に負担!】野球の調査で分かった肩甲骨とその周辺筋の重要性
    肩を痛める選手と肘を痛める選手の違い 同...詳細
  • 「投げる」動作中、肩の内部では何が起こっているのか?
    「投げる」動作中、肩の内部では何が起こっているのか?
    野球のみならず人間の一般的な動作に含まれる「投...詳細
  • 【ヤクルトスワローズ】秋季キャンプのトレーニング
    【ヤクルトスワローズ】秋季キャンプのトレーニング
    体力向上をメインとした「サーキットトレーニング...詳細
コラム
  • 箱根駅伝の区間賞の10人中7人が履いていたシューズ!!
    箱根駅伝の区間賞の10人中7人が履いていたシューズ!!
    今回も箱根駅伝大盛り上がりでしたね。 そんな選手達の頑張りを支える、あるアイテムがあったんです。 それは「NIKE Zoom Vaporfly 4% Flyknit」というランニングシューズです。...詳細
  • 【歯のケアしてますか?】スポーツパフォーマンスと「虫歯」の関係性
    【歯のケアしてますか?】スポーツパフォーマンスと「虫歯」の関係性
    毎日の歯磨き。皆さんはしっかりケアしていますか? 今回はスポーツパフォーマンスと「虫歯」の関係性をお伝えしたいと思います。 【歯は再生しない!】  スポーツ選手が筋肉痛やケガをした時に、...詳細
  • 【トレーニングに必須の知識!】最大筋力を高める4つの方法
    【トレーニングに必須の知識!】最大筋力を高める4つの方法
    瞬発系の種目を行っている選手には欠かせない最大筋力を高めるトレーニング。 最大筋力の発揮には、フリーウエイトでのトレーニングを組んでいる選手が多いかと思いますが、その中でも皆さんはどのような方法...詳細
  • 【海外大学が証明!】目標達成率が劇的に上がる、3つの事前準備とは②「行動可能性」
    【海外大学が証明!】目標達成率が劇的に上がる、3つの事前準備とは②「行動可能性」
    目標達成率をあげるMACの法則【前回の続き】について書いていきたいと思います。 前回のおさらい:【MACの法則とは何か?】 MACの法則とは、アイントホーヘン大学がメタ分析によって証明した、目...詳細

Category/カテゴリー

Sponsor/スポンサー

COPYRIGHT (C) SPORTS CROWD All Rights Reserved